Japanese
English
特集 聴覚神経科学の新しい展開
序
Introduction
加我 君孝
1
Kimitaka KAGA
1
1東京大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学分野
1Department of Otolaryngology, Graduate School of Medicine, University of Tokyo
pp.5-6
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901327
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- Abstract 文献概要
「神経研究の進歩」誌が“聴覚の神経機構”の特集を発刊したのは,昭和56年のことでそれ以来20年が過ぎた。その特集の企画と序の担当は当時,世界の聴覚生理学の牽引者で我が国の神経科学を代表する勝木保次先生であった。勝木保次先生は昭和6年に東京大学医学部を卒業し,耳鼻咽喉科学教室に1年だけ在籍し,その後,橋田邦彦教授の生理学教室に移り基礎研究を始めた。しかし,昭和13年陸軍軍医となり,従軍医師としてビルマ戦線をはじめとしてアジアの様々な地域を従軍した。生理学教室に戻って来たのは41歳の時であった。その後,勝木保次先生は東京医科歯科大学の教授になるとともに聴覚生理学が我が国で花開き,中枢の聴覚伝導路のあらゆるところをガラス電極で探索し,現在の基礎を確立した。さらに特記すべきことは,その教室から世界的な研究者が沢山生まれたことである。その一人がコウモリの音源定位の機構を明らかにした菅乃武男ワシントン大学教授で米国科学アカデミー会員である。昭和56年の特集は,勝木学派の成果が紹介され,その内容は“感覚上皮および蝸牛神経の微細構造,内耳有毛細胞の電気現象,フクロウの音源定位,遠心性制御,聴皮質の応答”などである。この時代は研究の手法は電気生理学が主であった。
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