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はじめに
HER2/neu(c-erbB2)(以下,HER2)遺伝子は,癌遺伝子の一つで,EGFR(epidermal growth factor receptor)ファミリーであるHER2(human epidermal growth factor receptor type2)蛋白質をコードしている1).HER2蛋白質は細胞表面に存在する受容体で,チロシンキナーゼ活性を有し,上皮細胞の増殖や分化にかかわっている2).
乳癌においては,その15~30%でHER2の遺伝子増幅や蛋白質の過剰発現が認められており,このような乳癌患者では予後不良であることが報告されている3,4).
また,モノクローナル抗体トラスツズマブは,HER2蛋白質過剰発現や遺伝子増幅のある(転移性)乳癌に対する治療薬として有効であることが示された5,6).
HER2検査は,乳癌の予後予測やトラスツズマブ使用決定に際して重要な検査項目になっている.このHER2検査は採取された乳癌組織を用いて免疫組織化学法(immunohistochemistry,IHC)あるいはFISH(fluorescence in situ hybridization)法によって行われるのが一般的であるが,血清中HER2蛋白質(以下,血清HER2)測定も保険適応されている.血清HER2測定は,簡便で迅速に検査結果が得られるため乳癌の転移・再発の補助診断,トラスツズマブの治療効果判定指標として期待されている.
これまでの酵素免疫測定法(enzyme immunoassay,EIA)では,モノクローナル抗体による競合阻害を受けるため,トラスツズマブ治療の影響がみられるものがあったが,近年開発された化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay,CLIA)ではこの影響を受けないとされている.
本稿ではHER2/neu蛋白質の概説と当院におけるCLIAによる血清HER2測定法について述べる.
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