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はじめに
癌遺伝子HER2/neuはc-erbB2とも呼ばれ,17番染色体(17q21.1)に存在し,細胞の分化,増殖,生存の制御に関与し,腫瘍の増殖に重要な役割を果たしている[Yamamoto,1986#523].癌遺伝子HER2/neuによりコードされているのが,細胞膜表面に存在する「HER2蛋白質」である.HER2はヒト上皮増殖因子受容体(Human Epidermal Growth Factor Receptor)type2の頭文字をとったもので,構造類似性からHER1,HER2,HER3,HER4の4種類の細胞膜貫通受容体型糖蛋白質が「HER受容体ファミリー」として知られている.このうち,HER1はEGFに対する受容体である.「HER2受容体」は,分子量185kDaの糖蛋白質(p185HER2)で,細胞膜を貫通する構造を有している.細胞外ドメインには,増殖刺激物質(ligand:リガンド)結合部位を持ち,細胞内ドメインには,細胞増殖刺激に働くチロシンキナーゼ活性を有する.HER受容体は細胞表面では,monomer(単量体)として存在している.HER受容体にリガンドが結合することにより,安定したdimer(二量体)を形成する.HER受容体ファミリーのうち,同じ単量体が結合する場合(homodimer)と異なった単量体が結合する場合(heterodimer)がある.HER2受容体は,EGF様物質(EGFおよびTGF-αなど)の刺激によりHER1/HER2 heterodimerを形成し,neuregulinesの刺激により,HER2/HER3またはHER2/HER4 heterodimerが形成される[Sundaresan,1999#524].そして,HER2受容体が含まれるdimerが形成されると,チロシンキナーゼが活性化され,細胞増殖刺激が細胞内に伝達されると考えられている.癌遺伝子HER2/neuは正常細胞にも相同染色体に1コピーずつ,計2コピー存在する.HER2/neuによってコードされるHER2受容体も正常細胞膜表面に存在する.
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