トピックス
ノンコーディングRNAの可能性
齋藤 力
1
,
林崎 良英
1
1理化学研究所横浜研究所オミックス基盤研究領域
pp.1383-1385
発行日 2008年11月1日
Published Date 2008/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102309
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■はじめに―Non-coding RNA worldの発見
ヒトゲノムプロジェクトによるゲノムDNAの塩基配列の決定およびアノテーションによって,遺伝子の総数は22,287と推定された1)が,ゲノムDNA中で蛋白質がコードされている領域はわずか2%以下であることが示された.一方で,マウスおよびヒトでの大規模cDNA(complementary DNA)解析がFANTOM(Functional Annomation of Mouse)1,2,3プロジェクトによって行われ,延べ151,047種類の転写産物の解析から,ゲノム全体の72%以上の領域からRNAが転写されていることが示され,転写産物のうち50%以上は蛋白質をコードしていないRNA(non-protein coding RNA,ncRNA)であることが示された2).さらに,Affymetrix社のGingerasのグループは,ゲノムタイリングアレイチップを用いたヒト21番,22番染色体の転写産物の網羅的解析から,同様に約60%の転写産物はncRNAであることを示した.
このようにncRNAは転写産物のなかで大きな割合を占め,その機能が近年明らかになってきた.本稿では,ncRNAおよびその疾病とのかかわり,臨床検査や創薬に向けた取り組みの概略を述べる.詳細な解説は,栃谷らによる総説3)や,特集「RNA研究の新知見と医療応用への展望」を参照していただきたい4).
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