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[新米医師の奮闘記]
遠い昔の話になって恐縮するが,私が医学部卒業3年目(1972年)の経験談から入ろう.初めて担当した厳しい白血病患者は急性前骨髄球性白血病,今でいうFAB分類でM3に当たる症例である.患者は49歳,男性,今まで健康であったが入院15日前より特別の誘引なく歯肉出血をきたし,止血が困難であったという.入院時の身体所見は,歯肉出血と四肢皮下いっ血斑を多数認めたがそのほかに異常所見はない.血液所見として,ヘモグロビン(Hb)13.6g/dl,血小板数3.5×104/μl,白血球数10,300/μl,白血球分類では骨髄芽球38%(非定型的白血病細胞21.5%),前骨髄球31%,そのほかわずかな成熟好中球とリンパ球であった.骨髄所見の特徴は,粗大なアズール顆粒で満たされ異型性の強い核をもつ前骨髄球が48.9%を占めていて,診断が確定した.
出血傾向に関する検査は,出血時間10分以上と著明に延長,プロトロンビン時間(prothrombin time,PT)と部分トロンボプラスチン時間(partial thromboplastin time,PTT)も延長,フィブリノゲン減少,euglobulin融解時間短縮(線溶能の亢進を示す),血沈1時間5mmと促進がない.当時は播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)の診断指標としてフィブリン分解産物(fibrin degradation product,FDP)などが使えなかったので,出血傾向検査を総合的にみて,貧血が目立たないこと,骨髄の巨核球がむしろ増加していること,などを勘案して発病後間もないDICを合併した急性前骨髄球性白血病として治療を開始した.
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