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Helicobacter pylori菌感染による発癌の機序
千葉 勉
1
1京都大学医学部附属病院消化器内科
pp.1481-1483
発行日 2007年12月1日
Published Date 2007/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101956
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はじめに
Helicobacter pylori(H. pylori)が胃発癌に深く関与していることは,さまざまな疫学的知見,および動物を用いた感染実験,さらに細胞を用いた実験から疑いの余地はなくなってきている1~3).従来,ヒトT細胞性白血病ウイルス(human T-lymphotropic virus,HTLV),EBウイルス(Epstein-Barr virus,EBV), さらにHBV(hepatitis B virus),HCV(hepatitis C virus)など,さまざまなウイルスが発癌に関与することはよく知られていたが,細菌が発癌に関与することが明らかとなったのはH. pyloriが初めてである.
既に言われているようにウイルス発癌では,ウイルスそのものによる直接的な発癌作用と,ウイルス感染による炎症を介した間接的な発癌作用の大きな二つの経路が存在している.H. pylori感染においても,おそらくウイルス発癌と同様に,この二つの経路が協調して働くことによって発癌が促進されるものと考えられる(図1).
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