増刊号 メタボリックシンドローム健診検査技術マニュアル
各論
1. 検査前手順 1) 生理的変動,サンプリング,試料の取り扱い (4) CBC
常名 政弘
1
,
矢冨 裕
2
1東京大学医学部附属病院検査部
2東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 病態診断医学講座 臨床病態検査医学分野
pp.1141-1146
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101883
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はじめに
メタボリックシンドローム健診導入に当たり検査値の標準化が重要な課題の一つに挙げられるのは周知のことである.一方,検査の測定値が種々の生理的要因や検体保存状態により変動することも周知のとおりである.
測定値の生理的変動因子は個人間変動と個人内変動に分けられるが,後者の行動要因に限っても,食事,体位,運動などの要因がある.また,検体をサンプリング(採血)した後の要因としては冷蔵,室温などの保存状態や保存時間などが挙げられる.測定項目にもよるが,これらの要因を考慮しないと検査結果の解釈を誤ることがある.測定項目のなかで末梢血球数検査(complete blood counts,CBC)に対する運動の影響も例外ではなく,白血球数,赤血球数,血小板数とも,運動負荷により測定結果が変動することは以前から知られている1~6).
さらにCBC測定においては正しい採血,分注処理が行われたとしても0.1~0.2%の割合でEDTA塩(ethylenediamine tetraacetate)採血では血小板が凝集し,血小板数が低値になるEDTA依存性偽性血小板減少症が存在する7).EDTA依存性偽性血小板減少症の患者とわからずに採血をしたとき,測定者が血球計数器の測定原理の知識を有していない場合や,分析装置からのフラグメッセージや標本による確認を怠った場合,検査結果の解釈を誤ることがある.
本稿では,CBCの運動負荷による変動と検体のサンプリング後の保存状態,保存時間による変動,また,EDTA依存性偽性血小板減少症について述べる.
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