ワンポイントアドバイス
臨床化学検査における基礎科学の重要性
関口 光夫
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1前日本大学医学部附属板橋病院臨床検査部
pp.666-667
発行日 2007年7月1日
Published Date 2007/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101772
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自然界で起こる現象を観測し,法則などで表現することで普遍化していくことが科学の基本と考えられる.一方,臨床化学検査は主に化学的な手法を駆使し,血液などに代表される生体試料中の成分を定性的,あるいは定量的に把握し,臨床診断をするうえでの情報や治療経過を観察する指標を得るための重要な検査である.このことは言い換えれば主として分析化学を駆使して生体中の成分を分析することである.したがって,臨床化学検査に携わる方は生体試料に関する知識と分析化学を中心に広く化学的な素養が要求される.例えば,分析化学の基礎となるあるいは関連する化学には,無機化学,有機化学,物理化学,電気化学,生化学,臨床化学などが挙げられる.これらの関連化学を完全に修得することは一般的には難しい.しかし,ある問題の解決を図るうえで,どの領域のどの法則や理論がその解決の手段として有効であるかを精力的に模索することが大切であるように思う.
酵素活性測定において,「温度の正確さと精密さはどの程度にすればよいか?」と問われることがある.そこで,その解決法への考え方について具体例を挙げて紹介したい.スウェーデンの物理化学者であるアレニウスは,1889年に温度,反応速度,活性化エネルギーなどの項から導かれるアレニウスの式を発表した.この式は温度変化に応答する反応速度を定量的かつ普遍的に予測することができる.ここではアレニウスの式を頼りに具体例を挙げて問に取り組みたい.
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