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急激な少子・高齢化の進行と国民医療費の高騰は,わが国の医療制度に抜本的な改革を迫り,医療を取り巻く環境は日に日に厳しさを増しています.検体検査を中心とした診療報酬の度重なる改定により,ブランチラボの院内導入や臨床検査部のFMS(facility managed system)化などによる検査のアウトソーシング化が進みつつあります.さらに,大学病院では,2003年4月から包括医療制度が導入され,卒後研修の必修化の日程も迫っており,大学病院臨床検査部にとってもまったく先を読むことができない状況です.まさに,暗夜航路を漂う船といったところです.
私どもの北里大学病院は,1971年の開院当初から院内に検査会社のラボを併設し,院内における生化学検査や免疫学検査を委託してきました.院内の臨床検査部による検査が当然であった当時としては,全国的にもユニークな病院であったと思われます.今からみれば時代を先取りしていたといえるかもしれません.この30年間,大学病院臨床検査部とブランチラボは院内で上手く棲み分けながら,検査業務を分担し,共存し合ってきました.しかし,医療環境の変化を受け,2000年には検体検査全体のブランチ化案が提示され,論議の末に私どもはブランチラボの院内取り込みという,時流とは逆の選択をしました.これは,ブランチラボの業務を院内に取り込み実施するが検査部の人員は増やさず,むしろ合理化と効率化により検体検査部門から生理検査部門に人員をシフトさせるというものでした.2002年8月には試薬リース方式の新しい検査室(免疫化学検査室)が稼動を開始し,また生理検査部門には5人の技師をシフトさせました.この改革により検体検査の迅速性が高まり,かつ生理検査の待ち時間短縮と新規検査の導入などにより臨床サイドからは高い評価を得ています.また,検査経費の削減による経済効果も予測どおりに生じています.
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