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はじめに―腎機能の評価
腎臓の機能は,体液,特に細胞外液量と組成の調節,老廃物の排泄,ホルモンの産生と代謝,酸塩基平衡の調節など,大変広い範囲にわたっている.血漿中に溶け込んでいる老廃物の排泄は,通常糸球体からの濾過により行われ,ごく一部の物質が尿細管より排泄される.一方,体液の調節は,ほとんどは尿細管が主役となって,再吸収および分泌が行われ,さらに尿の濃縮も行われる.腎臓はそのほか,内分泌器官として,レニン,エリスロポエチン,ビタミンD3の活性化,プロスタグランジンの産生にかかわっている.
進行性の腎障害を有する患者を診療していくに当たり,その進展を正確に把握することが最も重要である.そのため,腎機能検査としては,腎血流量,糸球体濾過機能,尿細管機能について正確かつ簡便に評価する必要がある.これらの分野に含まれる,いわゆる腎機能検査と呼ばれる検査項目にはさまざまなものが含まれている(表).腎疾患をみた際に腎機能を把握するために各検査を必ず行わなくてはならない,というわけではないが,腎臓関連の疾患をみた場合,診断,経過観察,治療を行うに当たりこれらの分野いずれかの検査が必要となる.しかしながら,複雑な検査方法,患者さんに過分な負担を与える検査,測定技術などで結果にかなりのばらつきが認められる検査など,問題を含む検査も少なくない.
本稿においては,現状で筆者が考える,必要な検査,要らない検査について概説してくことにする.ただし,筆者の「要らない検査」と判断した検査が,医療機関の規模や機能などによって,その判断が変わってくることがありうる,ということに留意いただきたい.また,健康診断などで日常的に行われる,いわゆる腎疾患のスクリーニングのために行われる検査については絶対的に必要な検査であるため,紙面の都合上省略させていただいた.
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