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はじめに
血液検査は,貧血,白血病,出血傾向など血液疾患の病態解析,診断,治療効果判定,治療経過観察,予後推定などに欠かせない.
血液疾患では,発熱や紫斑など身体所見に異常のみられることもあるが,無症状であることも少なくない.むしろ健康診断で受けた血液検査の結果が偶然に診断の端緒になることもある.診断だけでなく,重症度の判定や予後推定においても血液検査は重要となる.治療に当たっても,検査結果に基づいて方針が決定され,かつ治療効果も検査によって判定される.こうした意味で,血液検査は血液疾患の臨床に必須である.
血液疾患だけではない.感染症,悪性腫瘍,肝疾患,腎疾患,代謝異常症,膠原病など,あらゆる全身性疾患のスクリーニングとしても重要である.感染症では白血球数や分画検査が診断や重症度の判定に役立つ.悪性腫瘍や肝疾患,腎疾患では貧血や血小板減少の認められることが少なくない.膠原病は,汎血球減少症の存在から逆に疾患が診断されることもある.また,薬物療法では,薬物の副作用として顆粒球減少や血小板機能異常症を起こすことがある.このような副作用のモニターとして,血液検査は重要な意義を持つ.さらに,心房細動治療などの抗凝固療法では,当然ながら凝固系検査が治療モニターに必須である.
以上のように,血液検査は日常の診療活動に必要であり,欠かすことのできない基本的な検査である.ただし,血液検査項目のうちにも,もはや必要とは思われないものが含まれている.特に包括化医療など医療制度の改変が行われる今日,適切な検査を選別する努力が重要である.
本稿では,血液検査項目について,必要なもの,必要とは思わないものについて,あくまでも私見を述べてみたい.
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