今月の表紙
百聞は一見に如かず・6 ヘリコバクターピロリ
松谷 章司
1
1NTT東日本関東病院病理診断部
pp.555
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101248
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びらん(erosion)は上皮の浅い欠損を意味し,消化管粘膜の場合,粘膜筋板までにとどまる欠損を指す(Ul-).それ以上の深さに及ぶ組織欠損を潰瘍と呼んでいる(Ul-:粘膜筋板が断裂し粘膜下層に達する潰瘍;Ul-:固有筋層に達する潰瘍;Ul-:固有筋層の断裂する潰瘍).
潰瘍の発生成因については従来,胃粘膜を機械的あるいは化学的刺激から守る粘液層による胃粘膜防御(gastric mucosal barrier)が想定され,胃や十二指腸の消化性潰瘍の原因を攻撃因子と防御因子のバランスの破綻で起こるという有名なバランス説が主流であった.近年,ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)が脚光を浴びるようになっているのは周知の事実である.これは極多毛性の鞭毛を持つ微好気性グラム陰性らせん状菌で,ウレアーゼを産生するのが特徴で,胃炎や消化性潰瘍患者の胃粘膜から高頻度に分離される.現在は胃潰瘍のみならず胃癌や粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma,MALT lymphoma,MALToma)の発生とのかかわりも報告されている.
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