トピックス
網膜血管の足場を作るスイッチ蛋白質Tlx
植村 明嘉
1
1理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 幹細胞研究グループ
pp.177-178
発行日 2007年2月1日
Published Date 2007/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101206
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■網膜疾患における血管新生
網膜は脳と同じく中枢神経系の一部であり,さまざまな神経細胞が活発に活動している.このため酸素需要度が高く,血管が網の目のように張り巡らされており,なんらかの原因で血流が途絶えると低酸素状態となり,新たな血管を作るよう働きかけることが知られている.
糖尿病網膜症や未熟児網膜症では,網膜血管の閉塞に伴う虚血・低酸素に引き続いて血管新生がみられるが,こうした新生血管は虚血部位の網膜に向かわず,網膜外に逸脱して伸長することが多い.このため,網膜虚血が改善されないばかりか,新生血管からの出血や増殖組織による牽引性網膜剝離のため,重篤な視力障害をきたす.眼科臨床においては,こうした疾患群に対しレーザー光凝固が日常的に行われている.これは,虚血網膜を熱凝固によって死滅させ,酸素需要度を相対的に低下させることで新生血管を退縮させることを目的としている.このほか,最近では血管新生阻害剤の投与による薬剤療法も注目を集めている.しかし,網膜虚血の根本的な改善策としては,新生血管を網膜内に伸長するよう誘導し,血流の再開が得られることが望ましい.
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