検査ファイル
〈用語〉糖鎖抗原
神奈木 玲児
1
1京都大学医学部臨床検査医学教室
pp.1222-1224
発行日 1990年8月1日
Published Date 1990/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900356
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[1]概念
糖鎖はさまざまな抗原性をもっている.図1に示すように,細胞の表層では糖鎖は脂質に結合した形(糖脂質〔glycolipid〕と呼ぶ)か,あるいは蛋白質と結合した形(糖蛋白質〔glycoprotein〕)で存在するのが普通である.これらが細胞の糖鎖抗原(carbohydrate antigen)の重要な担い手である.糖脂質も糖蛋白質も,脂質部分かまたは蛋白質部分が細胞膜に埋め込まれており,ここから細胞の外側に向かって糖鎖が生えている.どのような糖鎖も,図2に示すように,その構造は最もコア分子に近い部分から順に,母核構造,基幹構造,修飾構造の三つの部分に分けて考えることができる.糖脂質も糖蛋白質も,糖鎖と,脂質や蛋白質のごとき糖鎖以外のものが複合してでき上がっている分子なので,合わせて複合糖鎖(glycoconjugate)とも呼ばれる.生体内には,ほかに何も結合しないで糖鎖だけの形で存在しているもの(オリゴ糖,多糖)もあるが,これらは抗原としてはむしろさほど重要でない.
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