連載 臨床医からの質問に答える
重症感染症に対してステロイドを投与した場合,炎症マーカーは何がよいのですか?
柴田 泰史
1
,
久志本 成樹
2
1日本医科大学付属病院中央検査部
2日本医科大学救急医学
pp.756-759
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100972
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はじめに
重症感染症に対するステロイド療法として当初はグルココルチコイドの大量短期投与法,いわゆるパルス療法として使用されており,エンドトキシンショックや敗血症の動物実験モデルで,生存率や臓器障害が著しく改善されたことから臨床に導入された1).しかしその後,臨床的な効果が認められないためにその使用は否定的な見解が優位となった2,3).その一方で,近年では集中治療領域や重症感染症に対するステロイド少量長期投与療法は,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome,ARDS)や敗血症性ショックなどにその有用性が示唆され,その使用頻度は増加しつつある4~6).しかしながら,ステロイドの投与は,白血球数や体温,C反応性蛋白質(c-reactive protein,CRP)の変化に影響を与えることから,ステロイド投与中の重症感染症症例における治療効果や重症度の評価に,これら炎症性マーカーを用いて正確に行うことは困難である7,8).したがって,ステロイド投与中の重症感染症の炎症反応を鋭敏に反映しかつ迅速に測定可能な検査法が期待されている.
本稿では重症感染症に対してステロイドを投与している場合,重症度や治療効果を判断するための炎症マーカーは何がよいか,日常的に測定可能なCRP,血清アミロイドA蛋白質(serum amyloid A protein,SAA)および新しいタイプの炎症マーカーとされているプロカルシトニン(procalcitonin,PCT)について,その有用性と問題点とについて述べる.
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