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悪性腫瘍や重篤な感染症の際に組織因子の血中流入や血管内皮細胞障害が起こると,血管内で凝固系因子が過度に活性化され,全身の細小血管内に微小血栓が形成される.この結果,局所組織や臓器に微小な虚血性傷害をもたらすと同時に,血小板や凝固因子の著減による凝固能低下(消費性凝固障害,consumption coagulopathy)と二次的線溶亢進による著明な出血傾向を生ずるという複雑な病態に発展する.このような状態で検査すると,血小板数やフィブリノゲンの著減,フィブリノゲン/フィブリン分解関連産物の増加が認められるのは周知のとおりである.ただちに基礎疾患に対する治療とともに抗凝固療法による血栓溶解および血小板輸血による出血傾向対策という相矛盾したような治療が開始される.
播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation,DIC)に随伴して高頻度に認められるものに糸球体血栓症(glomerular thrombosis)があり,病理解剖時に認められるDICの証拠となる.生前に臨床診断がつき,上記の処置がなされると発見できないことが多く,末期に急速に進行したDICで,特に未治療の場合に高頻度に認められる.時に広範な尿細管壊死や腎皮質壊死を伴う場合がある.血小板減少(thrombocytopenia)とは一般に末梢血中の血小板数が10万/μl以下になることを指す.血小板数が5万~10万/μl程度の軽度減少状態では自覚症状が乏しいが,3万/μl以下になると皮膚に出血斑が出現し,粘膜出血(鼻出血,歯肉出血,血尿,女性の月経過多など)が認められる.さらに1万/μl以下の高度の減少では,致死的な消化管出血や脳出血などをもたらす.
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