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当院ではこれまで胸水・腹水の一般検査は「穿刺液一般検査」として独立させ,一般検査室で実施してきた.一般検査室で実施してきた検査項目は外観(色調,混濁,性状),比重,蛋白,リバルタ反応(Rivalta reaction),ルネベルグ反応(Runeberg reaction)の5項目である.これらの検査項目は,当院検査部開設以来途切れることなく四半世紀以上にもわたって延々と半ば慣例的に行われてきた感があった.筆者はかねがねこれらのほとんど古典的ともいえる検査項目が今の急速に変貌しつつある臨床検査の中にあって本当に臨床上必要な検査であるのか疑問に思っていた.ほとんど人件費だけのしかも再現性や疾患特異性に乏しいこれらの検査を行うよりも先にもっと優先すべきことがあるのではないかと考え,当院ではこのたび「穿刺液一般検査」という検査項目を廃止した.
外観は採取した主治医自身が誰よりもよく知っている.比重は浮き秤で測定していた.浮き秤の目盛りは0.005刻みであるので,分析感度限界はその目盛りの半分,0.002か0.003である.浮き秤は長期に使用していると目盛りがずれてくるのでたびたび検定しなおす必要がある.蛋白は血清蛋白測定用の屈折計を用いていたが,これは血清蛋白用に目盛りを設定しているので,胸水や腹水でも同じように当てはめて考えるのは無理がある.しかも,屈折計自体の精度は3g/dl以下は保証されていない.リバルタ反応は19世紀に発表された超古典的検査であって,いまだに何を検出しているのか不明である.しかも,測定条件,すなわち,使用する水が井戸水か水道水か蒸留水か脱イオン水か,酢酸添加量が2滴か3滴か,照明が十分に明るいかどうか,黒背景の有無,測定時の温度,200mlのメスシリンダーの長さ(同じ200mlでも太さ長さはメーカーによって異なっている),そして判定者の目のよしあし,などで陽性にでも陰性にでもどうにでも変わりうる.ルネベルグ反応も同様である.
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