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涙の蛋白質とシェーグレン症候群―プロテオミクス技術を用いた非侵襲的診断法の開発
友杉 直久
1
,
北川 和子
2
1金沢医科大学腎機能治療学(腎臓内科)
2金沢医科大学感覚器脳病態学(眼科学)
pp.397-399
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100410
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はじめに
シェーグレン症候群(Sjögren's syndrome,以下SS)は,リンパ球や形質細胞が涙腺,唾液腺,耳下腺などの外分泌腺に浸潤し,腺組織が破壊され,腺機能が低下する慢性の自己免疫性炎症性疾患である1).この炎症反応は腎,肺,肝,消化管,神経系にも認められることがあり,SSは全身性疾患として捉えられている.
このSSの診断は,ドライアイ,口渇,唾液腺や涙腺へのリンパ球浸潤,SS-AやSS-Bに対する抗体,さらにローズベンガル試験で示される角膜上皮の破壊など,多様な所見を総合してなされる2).このような診断基準の問題点は,SSの診断が確定した病期には,既にリンパ球浸潤により腺組織が破壊されていることである.涙腺では,生検を繰り返し組織を得ることは困難であるため,SSの初期の病像や涙液低下の詳細な機序は不明のままである.このような観点から,SSの発症因子を指標とした,正確で非侵襲的な診断法の開発が現在期待されている.
これに対しわれわれは,プロテオーム研究における新しい質量解析技術であるsurface enhanced laser desorption/ionization time of flight mass spectrometry(SELDI-TOF-MS)を利用して,涙腺の病態を直接的に反映していると推測される涙液の蛋白質成分のうちから,疾患に特異的なバイオマーカーを見いだし,それらに基づいた非侵襲的診断法を確立した.
本稿ではプロテオーム研究の背景と,その臨床への応用を概説する.
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