検査じょうほう室 生化学 腫瘍マーカー・2
前立腺腫瘍マーカー―PSA・PAPを中心に
武内 巧
1
1東京大学医学部附属病院泌尿器科
pp.368-369
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100400
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PSAとは
PSA(prostate-specific antigen,前立腺特異抗原)は前立腺上皮細胞で産生される糖蛋白質である.PSA遺伝子のプロモーター領域にはARE(androgen response element,アンドロジェン反応部分)が存在し,androgen/androgen receptor複合体がそこに結合して転写因子として作用してPSAを男性ホルモン依存性に前立腺上皮細胞に発現させる.血中PSAは前立腺癌のよい腫瘍マーカーとして利用され,前立腺癌の検出や前立腺癌治療後のフォローアップに威力を発揮している.一般には血中PSAは4ng/ml以上を異常とされている.一般に50歳以上の男性では年1回のPSA測定と前立腺の触診とが推奨される.
米国ではPSAによる前立腺癌のスクリーニングが1989年に導入され,米国白人では早くも1992年には前立腺癌死亡率が減少に転じたと報告されている1).しかしながらPSAは前立腺癌以外の前立腺肥大症,前立腺炎といった前立腺疾患においても上昇するため,PSA高値の男性に対して前立腺生検を行った場合に偽陽性が多くみられる.また前立腺癌は緩徐に増殖するものが多いため,PSAが正常範囲であっても前立腺癌が存在する偽陰性も多々みられる.偽陰性を減らすためにPSAのカットオフ値を2.5ないし3.0ng/mlに下げるという考えもあるが,これは前立腺生検の陽性率を下げ,無意味な生検を増やしたり,あるいは生命を脅かすことのない無意味な(insignificant)前立腺癌を検出して手術療法や放射線療法を行うといった無駄な医療につながる可能性がある.
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