増刊号 一線診療のための臨床検査
第I章 総論―臨床編
5. 肝・胆道疾患
2)胆石症
真治 紀之
1
1岡山大学医学部・歯学部附属病院中央検査部
pp.1059-1061
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100230
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はじめに
日本人の胆石症の保有率は10~15%あるといわれており,食生活の欧米化により増加の傾向にある.女性,40歳代以上,肥満傾向にある人に多いとされており,年齢が高くなるほどその保有率も高くなる.
胆石症の典型的な症状としては胆石発作といわれる上腹部に突然起こる激しい発作性の痛みがある.脂肪分の多い食事や卵黄など,胆嚢を急激に収縮させるような食物を食べてから数十分~数時間後に突然上腹部痛,右季肋部痛が出現するのが特徴である.痛みは右肩や右背部・肩甲骨間に放散したり,嘔気・嘔吐さらに黄疸を伴うこともある.胆石に伴う合併症としては,このような痛みのほかに,急性胆嚢炎,肝機能障害,急性胆管炎,急性膵炎などが挙げられる.
黄疸,発熱や悪寒などを伴う際には胆嚢炎,胆管炎,膵炎などの合併を疑う.重症胆嚢炎,腹痛・発熱や黄疸などの症状をきたす総胆管結石や肝内結石症では早急な経皮経肝的,内視鏡的または外科的治療を要する.
鑑別診断としては,胆嚢の疾患では胆嚢ポリープ,胆嚢癌,胆嚢腺筋症,胆道ジスキネジー(dyskinesia),胆石症以外の腹痛をきたす疾患として急性膵炎,慢性膵炎の増悪,尿路結石,憩室炎,腸閉塞などの急性腹症や胃・十二指腸潰瘍,急性胃腸炎などを考える必要がある.
胆石を持っている人が必ずしもこのような症状が出現するというのではなく,無症状に経過し,検診などでの腹部超音波検査で偶然に胆石が発見される人も少なくない.
ただし,今回は初期診療において迅速性を要求される一般検査がメインテーマであるので,自覚症状があって外来を受診する患者で胆石症を疑う場合の検査を主に述べる.
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