増刊号 一線診療のための臨床検査
第I章 総論―臨床編
3. 循環器疾患の検査
2)高血圧
岸 良示
1
1聖マリアンナ医科大学循環器内科
pp.1034-1037
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100222
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通常の高血圧
高血圧は日本の成人において最も頻度が高く,日常の診療で最も多く遭遇する病気である.また,高血圧は心血管系疾患の基礎にある治療可能な主要リスクの一つであり,そのコントロールによって心血管系疾患の発症とそれによる死亡とを抑制できる多くの証拠が得られている.したがって,高血圧患者が適正に治療されることによる医学的,社会的な影響は多大である.一方で高血圧による自覚症状はないか,あるいはあっても乏しいことがほとんどで,高血圧患者の医療機関への初めての受診は,脳血管障害,虚血性心臓病など症状を伴う疾患を発症するか,大半は健康診断などで高血圧を指摘されることが契機となる.
“高血圧治療ガイドライン2004”によれば軽症以上の高血圧の基準を140/90mmHg以上として,軽症,中等症,重症に分類(表1)されているが健康診断などで初診となった無症状の患者では初診時に血圧が高くても,通常は可能であれば自宅血圧の測定記録を行うよう指示し,日を変えて再度数回血圧を測定する.その間に,心電図検査,胸部X線検査,心エコー検査により左室負荷所見および弁膜症などの器質的心疾患の評価を,また,血液生化学検査など(表2)により臓器障害,高血圧以外の合併する危険因子(表3)の有無を検索,血圧のレベルを加味して患者総体としての心血管リスクを評価する(表4).その際に重要となるのは腎障害,糖尿病,高脂血症などの危険因子の有無に加えて,本態性高血圧か二次性高血圧かの診断,主には二次性高血圧の除外となる.
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