今月の表紙
百聞は一見に如かず・21 消化管検査の盲点はもう存在しない?
松谷 章司
1
1NTT東日本関東病院病理診断部
pp.822
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100108
- 有料閲覧
- 文献概要
消化管内視鏡の発達は目を見張るものがあり,特に胃癌研究の歴史とともにわが国の内視鏡技術が世界をリードし続けてきた.上部消化管内視鏡検査では食道,胃,十二指腸までを,下部消化管内視鏡検査では直腸から回盲部に至るまで観察することができ,病変の局在のみならず,病変表面の微細構造を観察する拡大内視鏡は質的診断をある程度可能にし,IT(insulation-tipped)ナイフの導入は内視鏡的治療の適応も拡大してきている.
しかし,頻度が低いとはいえ小腸の悪性腫瘍はイレウス症状や下血で初めて発見されることが多く,まして術前内視鏡診断は不可能であった.小腸は胃の幽門から盲腸に至る全長6~7mの消化管で,十二指腸,空腸,回腸とから成り,胃液,腸液,胆汁,膵液などの消化液による管腔内消化と小腸微絨毛上皮細胞膜の酵素による膜消化が行われ,同時に多くの栄養素が吸収される.十二指腸の大半は直接後腹壁に固定されるが,空腸から回腸にかけては腸間膜によって後腹壁と結合し,複雑に折り畳まれて存在し,可動性があるために,体表から特定の部位を知ることは難しい.空腸の悪性腫瘍の約半数が腺癌で,回腸の悪性腫瘍は回盲弁(バウヒン弁,Bauhin valve)より口側50cmに好発し,悪性リンパ腫,腺癌,平滑筋肉腫の順に頻度が高いといわれる.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.