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種々のリポ蛋白質のうちでコレステロールの含量の多いLDL(low density lipoprotein,低比重リポ蛋白質)は冠動脈疾患(coronary heart disease,CHD)などの動脈硬化性疾患と最も関連が強い.多くの疫学研究により血清総コレステロール(total cholesterol,TC)の上昇に比例し,CHDの発症危険率が増すことは周知の事実である.例えばTCが200mg/dlのときの危険率を基準とするとTC250mg/dlでは2倍,TC300mg/dlでは4倍にも上昇するという.また近年ではCHDの診療,管理にはTCよりもLDL-コレステロール(LDL-C)の測定に重点が移ってきている.そして日常検査のなかでLDL-Cの高値に度々遭遇するが,これが原発性(一次性)高コレステロールなのか続発性(二次性)なのか見極めなければならない.ここではCHD発症の危険率の高い原発性高脂血症の一つである家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia,FH)についてわれわれの検査データを中心に述べる.
■家族性高コレステロール血症,FHの成因
FHはLDLレセプターの遺伝的欠損(異常症)によることが明らかとなっている.両親から受け継いだ1対のレセプター遺伝子のうち片方のみに欠損を示すヘテロ接合体と両方の完全欠損を示すホモ接合体とがある.これらは常染色体優性遺伝疾患であり,発症頻度はヘテロ接合体で約500人に1例と比較的多く,ホモ接合体は約100万人に1例とされている.すべての細胞は細胞膜にLDLレセプターを有している.これを介してLDLを細胞内に取り込み分解・合成を行い,細胞内への過剰なコレステロールの蓄積を防ぐことで血中のコレステロール値を調節している.FHではこのレセプターの遺伝子に異常があるためLDLレセプターそのものが欠損したり,機能が障害されたりするので,細胞内にLDLを取り込めず,血中にLDL-Cが多量に停滞してしまう.その結果,著明な高コレステロール血症を呈することになる.図にはその成因となるLDL遺伝子変異を示した.現時点で国内では80種以上の多様性が認められている.
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