今月の表紙
百聞は一見に如かず・20 心機能障害を形態から見ると?
松谷 章司
1
1NTT東日本関東病院病理診断部
pp.730
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100087
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昔,組織培養の基礎を学ぶ目的で,ラット胎児の種々の臓器を培養したことがある.組織を無菌的に摘出し,さらに注意深く細片にして,調製した培地を入れたシャーレに散布するのである.変性したり,死滅し浮かんだ細胞は何度か培養液を交換すると除去され,いわゆる生きのいい細胞だけがシャーレの底にシート状に張り付くのである.ほとんど無色透明な細胞なので,倒立位相差顕微鏡でコントラストを付けて観察すると,in vitroでも生き続ける個々の細胞の生命力に驚かされる.今でも印象に残っているのは心筋細胞である.散在性にシャーレの底に定着した心筋細胞は各々特有のリズムで収縮し始め,しばらくして,小集団を作るとそれぞれ連動して収縮し,やがてシャーレの底一面にシート状になったとき,全部の細胞が同じリズムで収縮するのは実に感動的であった.心筋の収縮というものを細胞形態で観察できたのだった.種々の病態において心筋組織はどのような病理形態学的違いを示すのだろうか.心筋症を高血圧症あるいは悪液質の場合と病理形態学的に比較してみる.
心筋症の定義は心機能障害を伴う心筋疾患であり,①拡張型心筋症,②肥大型心筋症,③拘束型心筋症,④不整脈原性右室心筋症などが挙げられる.
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