特集 癌の臨床検査
I 癌そのものをとらえる検査
2 癌遺伝子に関する検査
C.臨床に有用な癌遺伝子 2)N-myc遺伝子
嶋武 博之
1
,
塚原 哲夫
1
,
中川 千鶴
1
Hiroyuki SHIMATAKE
1
,
Tetsuo TSUKAHARA
1
,
Chizuru NAKAGAWA
1
1東邦大学医学部分子生物学研究室
pp.1308-1312
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917603
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
N-myc遺伝子は,神経芽細胞腫,網膜芽細胞腫およびWilms腫瘍などの特定の小児癌でのみ発現しており,胎児期を除いた正常組織ではその発現が認められない.これらN-myc遺伝子が発現している腫瘍(N-myc性腫瘍)の中には,N-myc遺伝子増幅型と非増幅型とが存在する.神経芽細胞腫において,N-myc遺伝子の増幅は予後と密接な関係を有しており,小児外科領域では不可欠な診断法となりつつある.一方,抗ヒトN-myc蛋白抗体によるN-myc遺伝子産物(N-myc蛋白)の検出法1)では,神経芽細胞腫などにみられるN-myc遺伝子増幅型腫瘍のみならず,非増幅型の腫瘍においてもN-myc性腫瘍であることを同定することができる.
N-myc性腫瘍の検査は,①遺伝子増幅の有無を検出するものと,②N-myc蛋白の発現を調べるものとがあり,以下おのおのについて述べる.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.