特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
4 リポ蛋白
1.分離超遠心法によるリポ蛋白の分離
横山 信治
1
Shinji YOKOYAMA
1
1国立循環器病センター研究所病因部リウマチ研究室
pp.1321-1325
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917519
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はじめに
生体にとって脂質の主な役割とは,過剰のエネルギーの単位体積の当たりの効率的貯蔵と生体膜の構築である.水に不溶であるという脂質の性質が,例えばトリグリセライドによる高い密度でのエネルギー貯蔵や,リン脂質二重層から成る生体膜による体液の隔壁としての役割を可能にしている.しかし,水を媒体として成立している生命体の中では,逆にこれらの脂質の代謝回転のために,なんらかの特別な輸送システムが必要となる.血漿リポ蛋白質と呼ばれるものは,この水に不溶な脂質を血流・リンパ流に乗せて体内を運搬するための,こうした輸送システムの一つである.
疎水性の物質ないし界面活性物質が水中で安定に存在する構造は,エマルジョンないしはミセルである.非極性脂質であるトリグリセライド,コレステリルエステルなどを中心球としてリン脂質,遊離コレステロールなどの極性脂質(界面活性物質,両親媒性分子)がその周りを取り巻いた構造が脂質エマルジョンであり,通常,外層は単分子膜である.また,リゾリン脂質またはリン脂質+界面活性蛋白(後述するアポリポ蛋白)はそれ自身でミセル構造をとり,水中で安定に存在しうる.血漿リポ蛋白質とは基本的にこうした構造をもつ脂質粒子であり,その表面に界面活性をもつ種々のアポリポ蛋白質が結合することによって生物学的活性を獲得し,分泌,酵素反応,受容体による認識などを受けることになる.
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