特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
序 臨時増刊「リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査」によせて
河合 忠
1
1自治医科大学臨床病理学講座
pp.1253-1254
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917506
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血漿中の脂質にはコレステロールエステル,遊離コレステロール,中性脂肪(ほとんどがトリグリセライド),リン脂質のほか少量の遊離脂肪酸が含まれている.正常人では,これらの脂質は血漿の約1%を占め,循環血液中では総量15〜30gにも及ぶ.これらのほとんどはリポ蛋白に結合しており,遊離脂肪酸は主としてアルブミンに結合して,脂質—蛋白質複合体として体液水分中に溶解している.
生体組織中で脂質が蛋白質と結合して存在することは,19世紀後半にすでに知られていた.1877年頃,J.Edmundsは血清中に微細な,屈析率の高い粒子のあることを報告している.その後1896年にはH.F-Müllerもこの事実を確認し,これをHamokonienと呼び,食後に増加することを認めている.1924年にはS.A.GageとP.A.Fishはそれらの微細粒子が乳びに由来すると考え,chylomicron (乳び粒)と命名したのである.血清中の脂質が蛋白質と結合していると推定させるデータを初めて提出したのはM.Macheboeufであって,ウマ血清ではあるが,初めて"リポ蛋白らしきもの"が硫安沈殿法によって分離された.しかし,この成績はその後十数年間ほとんど無視されていた.1933年になるとPV.Mutzenbacherが血清の超遠心分析を手がけ,1935年にはA.S.McFarlaneが少量のX-proteinの存在を指摘し,やがてK.O.PedersonらによってX-proteinが多量の脂質を含むことが明らかにされた.ここでMacheboeufのデータが見直され,脂質-蛋白質複合体の概念が確立されるに至った.
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