今月の主題 移植
技術解説
移植腎のモニター—;尿中成分を中心にして
東間 紘
1
,
石田 美久
2
Hiroshi TOMA
1
,
Yoshihisa ISHIDA
2
1東京女子医科大学付属腎臓病総合医療センター泌尿器科学
2東京女子医科大学付属腎臓病総合医療センター臨床検査室
pp.877-884
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917486
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尿は血液が腎糸球体で濾過されることによりつくられ,尿細管内を流れるうちに精製されて,尿路を経て体外へ排出される.したがって,尿中成分は血中成分の変動をはじめ,腎および尿路の変化に応じて常時変化しているわけで,特に腎そのものが病変の主舞台となるような腎疾患にあっては,尿成分の変動は,単に疾患としての特性を反映させるだけでなく,病変の動的把握をも可能にするものといえる.腎尿路疾患における情報源としての尿の価値は,質的量的にみて,血液や腎生検などに勝るとも劣ることはない1).
腎移植後の尿中成分の変動は,移植腎に生じるほとんどすべての器質的,機能的変化を反映するものと考えられる.正常であったドナー腎が摘出されて移植され,レシピエントの血流が移植腎内を灌流しはじめた時点から,刻々と生じる移植腎の生理学的あるいは病理学的変化および免疫学的変化は,当然ながらそのときどきの尿中成分に反映されるはずであり,この変化を観察することにより移植腎内の病態を逆に推測することも決して不可能ではない.
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