検査じょうほう室 生化学 腫瘍マーカー・8
膀胱癌マーカー―尿中 BTA・尿中 NM22を中心に
久米 春喜
1
1東京大学医学部泌尿器科
pp.960-961
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101032
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はじめに
膀胱癌は膀胱移行上皮より発生する悪性腫瘍で,尿路系悪性腫瘍では前立腺癌と並んで頻度の高い癌である.すなわち日常の臨床において,比較的扱う頻度の高い疾患である.
膀胱癌の診断には,膀胱鏡検査は不可欠であるが,膀胱鏡はやや手間のかかる検査であるばかりでなく,侵襲的で,特に男性においては非常な苦痛を伴う検査である.検査後の出血や感染のリスクも伴っている.したがって,膀胱鏡検査の施行に際しては,ある程度,対象症例を絞り込む必要がある.
絞り込みに有用な検査としては,細胞診や膀胱超音波検査が挙げられる.ただし,細胞診はしばしばその感度の低さが指摘されている2~4).また膀胱超音波検査でも,術者の技量によるところがある点,小さな病変が見えにくい点などいくつか問題があると思われる.
このようななか,尿中BTA(bladder tumor antigen,膀胱腫瘍抗原),尿中NMP22(nuclear matrix protein,核マトリクス蛋白質)が開発され,臨床の現場で頻繁に使用されるようになった.保険適用では,尿中BTAは膀胱癌の経過観察(膀胱内再発のチェック)に,尿中NMP22は血尿などで膀胱癌が疑われた症例に使用が認められている.本稿ではこの両者について概説する.
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