綜説
外科と血液凝固検査
二之宮 景光
1
1東京大学医学部第二外科
pp.167-171
発行日 1967年3月15日
Published Date 1967/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917119
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外科手術には出血が避けられないが,異常な出血は忌むべき不愉快な合併症であるために手術前のルーチンな検査の一つに出血性素因の検索が加えられるようになってからすでに久しい。しかしながら手術前に血液凝固に異常を認めない症例でも手術に伴うシヨックや低酸素血症,大量輸血などによって出血傾向の発現を見ることがあり,また脾機能亢進症や肝機能不全を手術前より伴っている患者では術中術後を通じて出血管理を行なうために,血液凝固検査を必要としている。さらに心房細動を有する僧帽弁弁膜症患者,狭心症患者などで抗凝血薬療法を実施している最中に行なう手術の場合,あるいは手術後の塞栓血栓症などに対して抗凝血薬療法を採用する場合には当然のことながら血液凝固検査が必須のものとなっている。このように全血凝固時間,出血時間せいぜい血小板数測定を行なった古典的なルーチンの検査に代って,系統的な検査を行なう必要性が高まっている。幸に最近の臨床検査法ならびに検査用試薬の改良進歩によって特殊の場合を除いては特別の器具装置を必要としない検査を十分に活用できることは周知のごとくである。
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