講座 病理学総論(その6)
腫瘍—再び器官の意味について
渡辺 恒彦
1
1東京逓信病院検査科
pp.573-577
発行日 1968年8月15日
Published Date 1968/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916448
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はじめに
腫瘍が炎症とならんで病理学の中で,横綱的位置を占めるということは前に述べた。だからこの小論でも,少なくとも炎症とおなじくらいの紙数を使いたかっにのだが,まことにずるい話で恐縮だが,腫瘍に関する細かい話は成書の記載を見ていただくとして,ここでは腫瘍を概観するにとどめ,むしろ生体における腫瘍の意味を主として考えてみたいと思う。腫瘍自体についての研究は,これからも述べるように,まことにはなばなしく行なわれているが,腫瘍をそれが発生している個体側からながめるという研究—というよりもむしろ,関心は一般にあまり高くはないようである。しかし腫瘍といえども,その終着点は結局個体側の問題に帰するはずだし,その点を筆者なりにこれから考えてみたいと思うのである。
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