特集 出血傾向のLaboratory Diagnosis
Ⅵ.出血性素因の新しい検査法と問題点
2.合成基質による検査法
浅井 紀一
1
1名古屋大学・検査部
pp.1394-1402
発行日 1980年11月1日
Published Date 1980/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915636
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凝固・線溶反応における合成基質の導入は,1954年Sherryらの合成したTAMe (Tos-Arg-メチルエステル)などのアルギニンエステルが,基質としてトロンビンのエステラーゼ活性の測定に使用されたのに始まるが,エステル水解活性が凝固活性と一致せず,基質の特異性や感度が低いなどの問題があった.しかし最近の蛋白質化学の進歩から,フィブリノゲンのトロンビンによる解裂部のアミノ酸構成に類似した発色性ペプチド基質Bz-Phe-Arg-p-ニトロアニリド(S-2160)がBlombächら(1972)により合成され,酵素反応を受けて遊離したパラニトロアニリン(pNA)の黄色の発色による酵素化学的初速度分光分析の容易なこと,試薬調整の容易さなどから,しだいに研究検査に用いられるに至った.
続いて,同様に遊離すると螢光を発するアミノメチルクマリン(AMC)を結合させた螢光性ペプチド基質も岩永ら(1977)により開発され,AMCは励起380nm,螢光460nmで螢光分析が可能であり,両種の合成ペプチド基質は多数合成されて凝固・線溶因子の測定用に応用され特異性も向上し,トロンビン,第Xa因子,カリクレイン,プラスミン,ウロキナーゼなどに適用が可能となり,更に発色基β-ナフチルアミンや螢光基アミノイソフタル酸ジメチルエステルなどの誘導体も出現し,普及拡大の状勢にある(表1).
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