今月の主題 赤血球の化学
技術解説
DNA合成に関する酵素の測定
坂本 忍
1
1自治医科大学・第1内科
pp.649-655
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915485
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細胞の分裂,増殖には細胞核におけるDNA複製が必要であり,このDNAの複製に関与しているのがDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)である.人間や哺乳動物のDNAポリメラーゼは多様で,少なくともDNAポリメラーゼα,β,γの3分子種の存在が認められている1).このような細胞のDNAポリメラーゼの多様性の意義と機能については,十分解明されていない.細胞の中のDNAポリメラーゼ活性の大部分を占めるのはDNAポリメラーゼαであるので,本酵素が細胞のDNAの複製に際し働くと考えられており,DNAポリメラーゼβは損傷したDNAの修復を行う酵素とみなされている2).DNAポリメラーゼγの機能は不明であるが,細胞がDNA合成を開始するときに働く酵素との説があるが,最近本酵素は核以外にもミトコンドリアのDNAポリメラーゼとみなされている3).
このようなDNAポリメラーゼの多様性は,細胞の増殖などの特殊な機能を円滑に営むうえで好都合である.人間の造血細胞のDNAポリメラーゼの検索は,種々の血液疾患の細胞の増殖の病態生理を解明する重要な情報を提供すると考えられる4,5).
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