今月の主題 感染症とバイオハザード
カラーグラフ
偽膜性腸炎とClostridium difficile
上野 一恵
1
1岐阜大学・嫌気性菌実験施設
pp.500-502
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915453
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偽膜性腸炎は抗生剤投与と密接に関係して発症する.発症頻度は比較的低いが,その大多数は重篤な基礎疾患を有し,手術後,特に大腸,直腸手術後にみられることが多い.その死亡率は約40%で重篤な疾患である.一方,抗生剤投与によって下痢が起こることもよく知られている.偽膜性腸炎,下痢症を起こす抗生剤としてはクリンダマイシン,リンコシン,アミノベルジルペニシリン,アモキシリン,セファロシン,セファゾリンなどが多い.一種の菌交代によると考えられ,C.difficileが105/g以上に検出される.また下痢便からはHeLa細胞などにCytopathic effectを起こす毒素が証明される.この毒素は56℃ 30分の加熱,C.sordelliiの抗毒素血清により完全に中和される.C.difficileは空気(酸素)に極めて弱い嫌気性菌である.
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