今月の主題 細菌性食中毒
技術解説
ブドウ球菌コアグラーゼ型別法の実際
潮田 弘
1
,
寺山 武
1
1東京都立衛生研究所
pp.779-784
発行日 1979年8月15日
Published Date 1979/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915164
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ブドウ球菌を黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,以下黄色ブ菌)と表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epide-rmidis,以下表皮ブ菌)に分類する基準性状はコアグラーゼ産生能とマンニット分解能である.この2菌種を病原性の面からみると,黄色ブ菌は病原株であり,表皮ブ菌は特殊な場合を除いて非病原株である.黄色ブ菌は化膿起因菌であり,また肺炎,髄膜炎,敗血症,表皮剥離性皮膚炎あるいは食中毒など,多種多様な疾患の原因菌となる.また本菌による院内感染の流行もまれではなく,その汚染源追求や各種疾患の原因菌型の調査,あるいは近年増加の傾向にあるブドウ球菌食中毒の疫学調査などに本菌の型別が必要とされる.
しかし,黄色ブ菌の型別については,これまでに多くの研究がなされてきたが,腸内細菌など多くの菌でなされている凝集反応による本菌の血清型別法1〜4)は培養条件などにより成績が安定せず,一般に応用されるに至っていない.世界的に最も普及しているファージ型別法5)は精度は高く,型別数が組み合せによってかなり多くなるので,諸外国はもちろん,我が国においてもよく用いられている.私どももこの方法を利用してきたが,20種以上の標準ファージを常備しておくことは非常に繁雑であるし,欧米で確立されたためか,化膿由来菌は別として,我が国で分離される食品,環境あるいは食中毒由来株の半数以上が型別不能である.
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