今月の主題 感染症
総説
腸内常在菌叢と感染症
小澤 敦
1
1東海大学・微生物
pp.349-359
発行日 1979年4月15日
Published Date 1979/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915067
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疾病に対する治療法の進歩に伴う医原的要因,例えば化学療法薬剤の乱用,多用,副腎皮質ホルモン,抗癌剤などの広範な使用ならびに放射線療法などの導入によって疾病構造が大きく変容し,我々が健康時保有している常在細菌叢のメンバーに属している菌によるいわゆる日和見感染(opp-ortunistic infection)が,臨床医学的問題として注目されている.
Theobald Smithによって提出された"感染は生物学的な寄生現象(parasitism)にほかならない"という考え方は,現在の変貌した感染症を理解し把握するうえに,極めて示唆的な基礎情報を提供している.感染症の病因論はRobert Kochの歴史的業績を基盤として出発し,結核症,チフス,コレラ,ジフテリア,百日咳,猩紅熱などの各種の古典的な,あるいは外来性(exogenous)の感染症の多くのものについては,ある種の条件付きで"Kochの条件"を満足させることができ,その起炎または原因菌は単一で,いわゆる"病原細菌"の範疇に属しているものであるということはよく知られた事実である.かくして一般的にこのような外来(原)性感染(exogenous infection)は,宿主と寄生体の間の単純な1対1の交渉の結果惹起されるものであるというふうに理解されよう.
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