Ex Laboratorio Clinico・22
Hb M症
柴田 進
1
1川崎医科大学
pp.1098-1103
発行日 1978年10月15日
Published Date 1978/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914895
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幅広い学問の素養
その人に運がついていると,次々に物事がうまく進行して難問を思いがけなく解くことができるものである.それとは反対についていない場合には,一所懸命努力しても成果が上がらない.だれであったか記憶していないが,ある作家がいかなる名将・名提督も運の悪い人は戦争に負けると書いていた.そのとおりであろう.こう言ってしまえば人生すべて運によって決められるのであるから,勉強家にとってはなはだ味気なく,何もする気が起こらなくなることだろう.しかしここで大切なことは,"する気"をもっていないと運もまたついてくれないことである.私は運が命ずるままに素直に,どんなことでも自分の好悪を離れて精進し,いろいろなことを手掛けて経験し,自分の守備能力範囲を広くしておくことこそ好運をつかむ道であると信ずる.つまり一口に言えば随時自分に与えられたものに,真剣に取り組んで腕を磨くべきである.狭い領域を深くつき進み,高度の知識と技術を発揮しつつある専門家から見れば,いったい何をやっているか分からない"何でも屋"で,道草ばかり食っている男だと見なされても,功をあせらず平気でいられる神経の太さが必要である.
ところでこのように人を育ててくれる学問があるとすれば,それが医学の中では臨床病理学である.私は学生時代に化学が大嫌いで,できれば将来この科目に接触せずに一生を過ごさせていただきたいと願っていた.
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