技術解説 コレラ流行時の細菌検査
2.カッパ型ファージ検査法
神中 寛
1
1防衛医科大学校・細菌
pp.592-596
発行日 1978年6月15日
Published Date 1978/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914771
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アジアコレラ菌とエルトールコレラ菌
コレラ菌(Vibrio cholerae serotype O−1)がそのO抗原の性質に応じて,稲葉,小川,彦島の三つのサブタイプ(旧来の型別方式ではこれらを単に血清型(serotype)と言う)に分かれることは,周知の事実である.一方その生物学的性状の違いによっては,生物型(biotype)を分かつことができるが,ここで問題になるのはアジア(古典)コレラ菌(biotype cholerae;Asiatic or classical cholera vibrio)とエルトールコレラ菌(biotype el tor;El Tor cholera vibrio)の二つである(表1).BergeyのManual第8版ではこのほかproteusとalbensisの二つを挙げているが,前者は事実上問題となるような流行の原因になったことはなく(1884年,ボンでこの菌が分離された小流行が知られているのみ),後者は水棲細菌で性状が違い過ぎ,V.choleraeの生物型とするかどうかさえ問題なので,ここでは触れない.
さてエルトールコレラ菌は1905年,Gotschlich1)によってシナイ半島のEl Tor検疫キャンプにおいて,赤痢様の症状で死んだ回教徒の巡礼数人から初めて分離されたためにこの名がある.
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