今月の主題 加齢と臨床検査
巻頭言
加齢と臨床検査
河合 忠
1
Tadashi KAWAI
1
1自治医科大学臨床病理学教室
pp.141
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913902
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人口の高齢化は先進国共通の問題であるが,日本の高齢化はどの国よりも急激に進みつつある.65歳以上の高齢者の人口は,特に1970年代から急激に増え始め,2020年には3188万人,総人口の23.6%に及ぶと予測されている.それらの高齢者の大部分は社会活動の第一線から引退し,身体的にも精神的にも衰えが目だってくる.必然的に心身上の異常を訴える比率も高く,それだけ医療機関を訪れる頻度も高くなり,臨床検査を受けることも多くなる.高齢者では心身の異常に対する感受性が低下するので自覚症状の割には重症な器質的変化を伴っていることも少なくない.それだけに臨床検査の異常所見に対する依存度も大きくなることになる.
臨床検査の実施に当たっては適切な準備が必要であるが,一般に高齢者では注意力が低下しているので,より一層丁寧な対応が必要である.また,精神的にも不安定な状態に陥りやすいので,採血時,採尿時,あるいは生理検査実施時には,通常以上に親切に接触しなければ検査のために協力が得られない場合もあろう.親切・丁寧な患者への対応が医療の基本であることは言うまでもないが,特に高齢者については注意が必要なのである.
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