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はじめに
1943年Hahnはヘパリンを静注後に採取した犬の血液をほかの犬に静注したところ,食餌性乳びが直ちに消失して,清澄な血漿になることを見いだした.その後,この活性は清澄因子リパーゼ(clearing factorlipase)と名づけられたが,1955年にKornはこのリパーゼは人工乳剤に対するよりもリボ蛋白に対して強い作用を有することからリボ蛋白リパーぜ(lipoproteinlipase;LPL)と命名した.KornはLPLの定義として,1ヘパリンによる活性化,2血清中の蛋白補助因子(cofactor)による活性化,3食塩および硫酸プロタミンによる抑制化を挙げている.
その後,ヘパリン静注後血漿(post-heparin plasma;PHP)でリパーゼ活性が測定され,それがリボ蛋白リパーゼ活性とか,ヘパリン静注後脂質分解活性(post-heparin lipolytic activity;PHLA)とか呼ばれていたが,このPHP中には種々の脂質分解酵素が含まれていることが明らかにされてきて,1972年にLaRosaら1)によって,PHP中には少なくとも2種類のトリグリセリド分解酵素が存在し,それは肝外性トリグリセリドリパーゼ(extrahepatic triglyceride lipase;LPL)と肝に由来する肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase;H-TGL)であることを報告した.これらのリパーゼの生理的機能については多くの研究によっておおよそ明らかにされてきた.それによると,LPLはキロミクロンや超低比重リボ蛋白(VLDL)という大型のリポ蛋白中のトリグリセリド水解に働くのに対し,H-TGLはより小さなリポ蛋白,例えば中間比重リポ蛋白(IDL)や高比重リポ蛋白(HDL)中のトリグリセリドやリン脂質の水解に働いている.これらの作用を通して,生体内のリボ蛋白代謝に深く関与している酵素である.
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