今月の主題 迅速検査;現状と今後の動向
巻頭言
迅速検査と今後の医療
大久保 昭行
1
Akiyuki OKUBO
1
1東京大学医学部臨床検査医学教室
pp.233
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913593
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検査法が発達したおかげで,医療も科学的根拠に基づいて行えるようになった.しかし,作業効率の面から機器の開発が行われてきたため,集中的に検査を行うのに適した検査機器がまず開発された.検査技師の誕生,測定法の進歩,検査機器の発達によって,検査効率は良くなり,検査の信頼性も高まり,検査費用も安くなってきた.その半面,医師が診療する際,そのときの患者のデータを知ることがかえって困難となる場合もみられるようになった.
救急患者はいうまでもなく,あらゆる病者は適切で迅速な治療を求めている.急性疾患患者を診療するときに,リアルタイムに検査データを得られないとしたら,適切な治療は期待し難い.検査データが治療に役だつことが明らかになればなるほど,リアルタイムの検査が望まれるようになる.慢性疾患では,症状が変わらなくても病態に変化が起こっている場合がまれではない.そのために患者の受診回数が増えるとしたら,その費用は当然検査費用である.直接費用だけでなく,診察のために医師と患者の時間が失われ,患者の生活の質が損われる.医療の質を高めようとすれば,緊急検査と通常検査のほかに,リアルタイム(2時間以内)に検査データが利用できるような検査システムが必要となる.診療所や病院では,このようなリアルタイムに検査データを出せる迅速検査システムの構築が大きな課題となっている.
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