今月の主題 生体リズム
生体リズム
血糖
土井 邦紘
1
,
森田 須美春
1
,
馬場 茂明
1
Kunihiro DOI
1
,
Sumiharu MORITA
1
,
Shigeaki BABA
1
1神戸大学医学部第二内科
pp.841-844
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913034
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1.はじめに
生体にとって血液中の糖(グルコース)は,エネルギー源として重要な働きを有していることは一般に知られているところである.しかし,血中のグルコースはそればかりではなく,組織・細胞とそれをとりまく外液との浸透圧バランスを握るきわめて微妙な働きをしている一つの因子であることもまた事実である.
血糖値が高くなると,生体の細胞はグルコースの利用ができにくくなり,血管系のみならず全身の組織の代謝異常を生じせしめることになる.これが持続的高血糖状態となったのが糖尿病である.さらに血糖値が高くなると,グルコースに依存している脳,神経系細胞は機能を果たすことができなくなり,やがて意識障害を生じてくる.すなわち高血糖性糖尿病性昏睡である.反対に血糖値が低くなりすぎると,やはり,グルコースに依存する細胞は,障害を受け意識障害が現れてくる.両者とも生体にとって非常に危険な状態であり,ことに低血糖はすばやい治療を行わなけば,助命することが不可能であるか,たとえ意識が戻っても,もはや人間としての精神活動ができない,いわゆる植物人間となることが多い.このような微妙な血糖値はどのようにして生体では一定の値に保たれているのであろうか.
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