特集 これだけは知っておきたい治療のポイント
VI 糖尿病・代謝
2.糖尿病合併症の治療
低血糖の治療法
馬場 茂明
1
1神戸大第2内科
pp.1774-1777
発行日 1973年11月20日
Published Date 1973/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205101
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
生体は血糖が正常範囲を逸脱すると,ホルモン性,あるいは代謝性の平衡が乱されて,何らかの障害が起こる.特に低血糖状態において顕著に表現されるので,成人では血糖が50mg/100ml以下,満期分娩後48時間以内の新生児では30mg/100ml以下の状態を低血糖状態として定義される.
しかし,単に低血糖のみで特有な臨床的症候が現われるとはかぎらず,個人差も特に大きいが,脳神経と自律神経障害による症候が主体である.臨床的には脳性低酸索症(hypoxia)のそれにきわめて類似した症状であり,例えば半身不随,半身不全麻痺,失語症,失音症,あくび,意識障害,冷汗,寒気,振せん,頭痛,視力障害,心悸亢進などである.発症はきわめて顕著に,かつ急速に起こり,適切な処置にて急速に低血糖が回復すれば容易に症状は寛快し,正常化するが,遷延した場合は,たとえ血糖が正常化しても意識障害は回復しない場合もあり,緊急処置を要する重要な症候といえる.またこれら低血糖をきたす原因はきわめて多岐にわたるため,治療控としてはその原因にもとづくことはいうまでもない.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.