分離分析の技術Ⅰ・6
電気泳動法によるHbAIの測定
馬場 茂明
1
,
窪田 伸三
1
,
老籾 宗忠
1
Shigeaki BABA
1
,
Shinzo KUBOTA
1
,
Munetada OIMOMI
1
1神戸大学医学部内科学第2講座
pp.702-707
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911572
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はじめに
健常者赤血球溶血液の電気泳動を行うことにより,1955年,Kunkelら1)が初めてメジャーヘモグロビン(major hemoglobin;HbAII)の陽極側に析出するファストマイナーヘモグロビン(fast minor hemoglobin;HbAI)を発見した.1958年2),1959年3),SchroederらはこのHbAIをカラムクロマトグラフィーを用いて五つの亜分画に分け,HbAIa, b, c, d, eと命名した(図1).1968年,Rahbar4)らが糖尿病患者において,このHbAIcが健常者に比較して約2倍に増加することを報告して以来,HbAIcと糖尿病との関係が注目されてきた,HbAIはヘモグロビン鎖のアミノ基N末端にグルコースがSchiff塩基結合し,さらにアマドリ転位し,ケトアミンを形成したもので(図2),HbAI生成は非酵素的で赤血球寿命約120日の間,徐々に行われると言われている5),現在,HbAIは長期の糖尿病コントロールをみる指標の一つとして有用視されている.HbAId, eはごく微量であり,HbAIa, bは量的に少なく,糖尿病患者ではHbAIcの変動と並行6)しており,またHbAIの中でHbAIeが大半を占めていることから,HbAIcの変動を臨床的にはHbAIa+b+c(HbAI)として観察していることが多い.
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