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今日の免疫学の進展は目覚ましく,リンパ球,マクロファージなどがお互いに助け合い,また索制し合って一定の調和を保ちつつ,免疫の機能が発揮されていることが明らかになっている.さらに,研究は進められ,DNAレベルにおいても特異抗体産生の機序,特異性を有するリンパ球の出現の機作が解明されつつある.そして,モノクローナル抗体,インターリューキン(IL 1,2),インターフェロンなど,免疫学の成果が実用になろうとしている.「抗体とは抗原が動物体に侵入したときに,特異的に反応する物質として作られる血清中のグロブリンである」として,今世紀初頭に立てられたEhrlichの側鎖説およびその流れをくむ仮説の時代に学んだ当時は考えも及ばない,驚くべき進歩である.
この現代免疫学の展開の原動力になったのが,世紀の論客Burnet卿の大胆な仮説である.ウイルス学者であった卿は免疫応答に注目したが,自然淘汰による進化論の立場から思索を進めた.その説は生物界の自然現象を巧みに利用しており,いろいろな免疫現象を無理なく説明できるので,納得するものが多かった.その仮説を証明しようと若者は,一番乗りを目指して頑張る.そして,疑問も提出されると,その疑問を逆に利用して次の新な説へと転進し,さらに魅力ある説が打ち立てられ,若者にファイトを湧き立たせる.
第一の成功は,Owen(1945)が,ウシの二卵性双生仔で二つの異なる血液型が混存しても/1二いに抗体を作らずに生存するキメラ動物ができることを発見したのに着目,動物が自己と非自己を認識する力,すなわち免疫能力を持つようになるのは胎生期に獲得するからと考え,本来免疫原となる物質が胎生期に侵入すると免疫ができなくなり,寛容になるという免疫学的寛容の存在を予、1した.その後,Medawarら(1953)によるマウスの実験により,その予言の正しいことが証明され,1960年にはMedawarとともにNovel賞を受賞している.
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