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第14回日本免疫学会総会が12月4〜6日まで大阪において開催された.免疫学会への応募演題数は年々増加の一途をたどり,本年度は577題に達した.学会の初期の頃は各演題に30分の持ち時間が与えられていたが,現在では15分に圧縮され,類似の内容の演題が並んで冗長になったり,内容的に希薄なものも目だつようになってきた印象を受けたのは筆者だけではなかったようである.さて,学会では八つのセッションが同時進行であったため,すべてのトピックスに触れることは無論不可能である.ここでは私個人の興味を中心にして述べさせていただく.
"B細胞の分化と調節因子"は五つのセッションに43題が並び,その多くは,この分野で世界的にもしのぎを削っている阪大(岸本・浜岡ら)グループからの発表であった.B細胞活性化因子(BSF)は,従来マイトーゲンで刺激したT細胞やT細胞ハイブリドーマから得ていたが,分離・精製には収量などの問題があり,安定した細胞株の樹立が望まれていた.清水ら,石橋ら(阪大・三内)はHTLVでトランスフォームしたヒトT細胞株(TCL-Na1)培養上清中に,末梢T細胞からのものに比べ900倍も強い活性のあるBGDF(BCGF II)とBCDFが産生されることを見い出し,この性状を検討した.このBGDFはマウスおよびヒトB細胞の分裂および分化を誘導する活性を持ち,分子量150KD, pI 5〜6であった.彼らはさらにBGDFのmRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入する翻訳系を樹立している.同じく曽ら(阪大・三内)はEBウイルスでトランスフォームしたヒトB細胞株(CESS)からもB-BCDF(分子量20〜25 KD, pI 5.1〜5.2)を単離精製しており,これらの因子をコードする遺伝子のクローニングも近いことをうかがわせた.
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