特集 住民の保健をいかに進めるか—第5回社会医学研究会・主題報告と総括討論
主題報告
討論
pp.632-633
発行日 1964年11月15日
Published Date 1964/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202929
- 有料閲覧
- 文献概要
神谷(名大医・公衆衛生) 戦後の国民保健の増進に保健所が大きな役割を果してきたことは今日だれも否定する者はない。しかし最近の高度経済成長政策の推進にともない,また厚生省の45年をめざす長期計画の策定とあいまって,公衆衛生の各分野に大量のプログラムが投下されるようになってきている。このような上からの一連の要求とそれを実際に受けとめて実施する側の保健所職員との矛盾がたいへん大きくなってきている。日々接する住民の生活の実態と上からの要求の食いちがいに良心的な保健所職員は悩まなければならず,さらにこれをつきつめてゆくと大量に負荷されてくるプログラムは真に国民の保健をめざすよりもむしろ国なり自治体なりの恥部をおおういちじくの葉ッパではないか。たとえば公害問題ひとつにしてもどこまでほんとうにやる気があるのか,てつてい的にそれを解決するという基本的な姿勢に立っての施策なのかあるいは一時的な言いのがれの糊塗策なのかという疑問が生まれてくる。さらには保助看法の改正,公衆衛生従事者の教育訓練,保健所費の整理統合など保健所の合理化政策がしつように追求されるようになって良心的な保健所職員の苦労はますます深くなつてくると思う。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.