特集 超音波検査の技術と臨床
Ⅰ.基礎
2.新しい手法
6)硬さの評価法(2)血管壁
金井 浩
1
,
長谷川 英之
1
,
小岩 喜郎
2
,
手塚 文明
3
,
市来 正隆
4
Hiroshi KANAI
1
,
Hideyuki HASEGAWA
1
,
Yoshiro KOIWA
2
,
Fumiaki TEZUKA
3
,
Masataka ICHIKI
4
1東北大学大学院工学研究科電子工学専攻
2東北大学大学院医学系研究科
3国立仙台病院臨床研究部
4JR仙台病院外科
pp.1229-1232
発行日 2001年10月30日
Published Date 2001/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904911
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はじめに
動脈硬化症における様々な病態は血管壁に生じた粥腫の物理的脆弱性(易破裂性)により引き起こされると考えられ,粥腫病変の易破裂性が医学上の大きなトピックとなっている.例えば,心筋梗塞・不安定狭心症・突然死にも冠血管内粥腫の易破裂性の関与が大きいと考えられており,分子生物学的なアプローチを含め様々な方向から積極的な検討がなされている.しかし,個々の患者の粥腫の易破裂性を,その内部物性にまで踏み込んで把握しうる方法は開発されていなかった.例えば,従来血管の硬さとして臨床の場で測定されてきたものは,脈波伝播速度あるいはstiffnessparameterなどの,血管長軸方向や横断面での平均的で,かつ壁厚・内径比によっても影響される指標に限られていた1).これに対し,最近開発された「位相差トラッキング法」では,心臓・血管壁の内部数百ミクロンの厚さの層ごとの瞬時的な厚み変化の速度を経皮的に高精度に計測でき,壁にかかる脈圧を考慮することで,血管壁の層別の弾性値を描出し得る2~6).
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