特集 産業医学と臨床検査
Ⅱ.有害因子と臨床検査
2 化学的因子
3 鉛
和田 攻
1
,
石川 晋介
2
,
柳沢 祐之
2
,
真鍋 重夫
2
Osamu WADA
1
,
Shinsuke ISHIKAWA
2
,
Hiroyuki YANAGISAWA
2
,
Shigeo MANABE
2
1東京大学医学部衛生学教室
2群馬大学医学部衛生学教室
pp.1345-1353
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912367
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□鉛中毒とその検査の歴史
鉛中毒は,すでにHippocratesの時代から知られていたが,その検査手技が出現したのはつい最近のことである.一般臨床検査学の発展により,まず鉛中毒で貧血がみられることがわかって一つの指標とされ,これは現在まで受け継がれているが,これのみでは他の貧血との鑑別が不可能であった.同時に,赤血球の中毒性顆粒が多くの中毒で出現することが知られ,鉛に関しても好塩基性斑点の検出として受け継がれ,蛍光法など鋭敏な方法も出現したものの,現在ではその鋭敏性や感度などで劣るため,あまり用いられなくなった.
古くから,鉛中毒患者の尿にポルフィリン体の排泄が増加することが知られ,秀でた指標として多く用いられた.しかし,肝疾患,貧血,その他でも尿中排泄増加がみられること,測定法に注意を要すること,日光照射などで分解されやすいことなどから,いちおうは現在でも鉛曝露指標の一つとして残っているものの,あまり重視されなくなってきている.その後,血中および尿中鉛を測定できるようになり,まずジチゾン法,次いで原子吸光法(AAS)が出現,最近では無炎型原子吸光法,ポーラログラフ法,放射化分析など優れた方法が開発されつつあるが,今のところ原子吸光法が主流となっている.これらの方法による鉛量の正常値は,不思議なことであるが,年々低下しており,これは測定法の改良に伴う系統誤差の減少によるものと考えられる.
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