特集 産業医学と臨床検査
Ⅱ.有害因子と臨床検査
1 物理的因子
6 放射線
東郷 正美
1
Masami TOGO
1
1東京大学医学部放射線健康管理学教室
pp.1320-1325
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912360
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□はじめに
本特集号では産業現場における有害因子が多数取り扱われているが,放射線については特異な点が多々ある.例えば,生命がこの地球上に発生して以来,天然の放射線を浴び続けてきているし,将来も変わることなく浴び続けるであろう.これは避けることができない.
被曝した本人に何か有害な効果が現れるだけでなく,その人の子孫にも影響が現れるかもしれない.いかに有害な物質でも,あるいは病原微生物であっても,なんらかの経路で身体に接触または侵入しない限りは有害な作用は人体には生じないが,放射線は近づくだけで被曝が起きる.さらに臨床医学では診断や治療の目的で,人為的に患者に被曝させている.一方では,広島や長崎における原子爆弾による被爆という不幸をわれわれは経験しているし,また一方では原子力発電で同じ原子力を平和的に利用している.そして米国スリーマイル島の事故も発生している.まさに放射線は両刃の剣である.
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